改正の全体像と背景
今回の改正は、区分所有法の改正と連動した大規模なものです。背景には「建物の高経年化」と「居住者の高齢化」という2つの老い、そして「所有者不明化」への危機感があります。 管理組合としては、「法適合性の確保(守り)」と「管理の円滑化(攻め)」の両面から規約を見直す必要があります。
【必須】法改正に伴う重要変更点
以下の項目は区分所有法との整合性を取るため、速やかな対応が求められます。放置すると総会決議が無効になるリスクがあります。
現行
組合員総数の 3/4以上
※欠席者・所在不明者は「反対」と同じ扱い
改正後
出席組合員の 3/4以上
※出席者の中での多数決が可能に
規約改正や共用部分の変更など、重要事項を決める「特別決議」の要件が変わります。これまで無関心層や所在不明者が多いと可決が困難でしたが、改正後は出席して意思表示をした人の賛成多数で決定できるようになります。
注意点:「出席者」には委任状や議決権行使書提出者も含まれます。
- 基本
「半数以上」から「過半数」へ
従来の「半数以上(50%含む)」から、より明確な「過半数(50%超)」へと変更されます。
- 特別決議時
二重の定足数要件
特別決議を行う総会では、以下の両方を満たす必要があります。
1. 組合員総数の過半数の出席
2. 議決権総数の過半数の出席
① 議案の要領通知が必須に
これまでは特別決議事項のみ必要でしたが、全ての議案について「議案の要領(賛否を判断できる程度の要約)」を通知することが必須となります。
② 緊急時の期間短縮制限
緊急時に総会を招集する場合の最短期間が、従来の「5日間」から「1週間」に変更されます。これより短い期間設定は無効となります。
施工不良などで分譲業者に損害賠償請求をする際、これまでは所有者が変わっていると「現在の所有者」しか請求できず、「過去の所有者」分が請求できない等の問題がありました。
改正後のポイント
理事長(管理者)が、旧区分所有者も含めて一括して損害賠償請求を行える旨の規定が整備されました。これにより、管理組合として統一的な対応が可能になります。
管理をアップデートする「5つの戦略」
法改正への対応だけでなく、管理組合運営の実情に合わせた「使いやすい規約」にするためのポイントを詳細に解説します。
1. 管理運営のデジタル化
改正のポイント
- WEB総会の明文化:場所の定めのないWEB会議システムを用いた総会の開催が可能であることを明確化。
- 電子投票の導入:書面による議決権行使だけでなく、電磁的方法(WEBフォームやメール等)による行使を規定。
- 書類の電子保存:議事録や会計帳簿を「電磁的記録」として作成・保管することを許可。
導入メリット
遠隔地に住む組合員や多忙な現役世代が総会に参加しやすくなり、出席率の向上が期待できます。また、ペーパーレス化による印刷・郵送コストの削減にも繋がります。
規約への反映例
第○条(総会)
...議決権の行使は、電磁的方法により行うことができる。
2. 所有者不明・管理不全への対策
改正のポイント
- 所在等不明者の除外:理事会決議を経て裁判所に請求することで、所在不明者を総会決議の母数から除外可能に。
- 管理不全対策:ゴミ屋敷化や著しい老朽化など、管理不全な専有部分に対し、裁判所を通じて管理命令を請求できる手続きを整備。
導入メリット
「連絡が取れない所有者がいて重要決議が通らない」というデッドロック状態を解消できます。また、放置された部屋による悪臭や害虫被害など、近隣トラブルへの法的な対処手段を確保できます。
手続きの流れ
- 理事会にて申立てを決議
- 理事長が裁判所へ請求
- 裁判所の決定(除外/管理命令)
- 決定後の総会にて決議/管理開始
3. マンション再生の円滑化
改正のポイント
- 修繕積立金の使途拡大:建替えやマンション再生(更新・売却等)の合意形成に向けた「初期調査費用」に修繕積立金を充当できることを明記。
- 決議要件の緩和:耐震性不足などの「客観的事由」がある場合、建替え等の決議要件を4/5から3/4に緩和。
導入メリット
これまでは「検討するための費用」をどこから出すかがハードルとなっていましたが、積立金を活用することで、将来に向けた議論(建替えか、長寿命化か)を早期にスタートできます。
修繕積立金の使途
以下の項目が追加可能です:
- マンション再生等に係る合意形成に必要となる事項の調査費
- 建物の更新(一棟リノベ)の検討費
- 敷地売却の検討費
4. 多様化するライフスタイルへの対応
具体的な対応項目
- 置き配のルール化:共用廊下への一時的な荷物設置(置き配)を認めるか否か、認める場合の条件(当日回収など)を使用細則で規定。
- EV充電設備:共用部分への設置要件緩和。
- 専有部分への立入り:漏水事故など緊急時に、管理組合が専有部分へ立ち入り、必要な保存行為を行う権限を強化。
導入メリット
現代生活で一般的になったサービス(宅配、EV)に関するトラブルを未然に防ぎます。特に漏水時の立入り権限強化は、被害拡大を防ぐために極めて重要です。
使用細則の見直し
規約本体だけでなく、細則の整備も重要です。
5. 管理組合のガバナンス強化
改正のポイント
- 職務代行者(代理出席):理事が出席できない場合、配偶者や一親等の親族が「職務代行者」として理事会に出席・議決することを認める規定(あらかじめ規約で範囲を定める必要あり)。
- 外部専門家の活用:マンション管理士等を役員に選任する場合のルール整備(利益相反取引の防止等)。
- 国内管理人:海外居住オーナーに対し、国内の連絡先(代理人)選任を義務付け。
導入メリット
役員のなり手不足対策として有効です。また、外部専門家を入れることで管理の質を向上させたり、海外オーナーとの連絡不通リスクを軽減できます。
なりすまし防止
管理組合財産を狙った犯罪を防ぐため、役員就任時に「本人確認(顔写真付き身分証の提示等)」を行う規定を設けることが推奨されています。
規約改正までの具体的ステップ
現状把握・診断
現在の規約と標準管理規約を比較し、必須変更箇所と独自の課題(置き配等)を洗い出します。
素案作成
理事会にて改正の方針を決定し、具体的な条文案(素案)を作成します。専門家のチェック推奨。
説明会・広報
総会前に説明会を開催し、改正の意図を周知。合意形成を図ります。
総会決議
特別決議を経て改正完了。施行日以降、新しいルールでの運用が始まります。
専門家のサポートで、安心の規約改正を
標準管理規約の改正内容は多岐にわたります。
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